土曜の朝が始まる
いつもの様に朝9時に
スマホのアラームより
数分早く目が覚め1日が始まる。
ここの所の朝は毎日だ。
これから始まる1日を考えると
溜息が出る。
足にまとわりつく猫達と共に
母の寝室へ向かいおはようの
挨拶をする。
今日こそは母の声が聞けるだろうか?
この十数分後に母の苦痛の叫びを
聞く事になるとは思わなかった。
母の声を久々に聞く
朝食は毎日キッチンカウンターで
取っているが今日は起きたくない
そうだ。
まぁー、いつもの事である。
冷蔵庫からカロリーメイトゼリーを
取り出し、洗面器と水の入った
コップにストローを持ち母の元へ。
口の中をゆすいだ後に
カロリーメイトゼリーを飲む
母に特別異常は無い。
母の食事が済み私はメロンパンを
抱えソファーに倒れこむ。
安心しろ。
メロンパンは無事だ。
自ら飲食を禁止したこのエリアで
私がメロンパンをボロボロこぼしながら
横になって居ようが誰も咎めない。
やがて瞼が重たくなり
眠りにつく。
どれくらいの時間が経ったのだろう?
「いたぃー、猫月ぃー」
母の苦痛の声で目が覚める。
ふらつく体で母の寝室へ向かう。
腕を抑え丸くなる母
何が起きたのかわからない。
母は右腕を左手で覆い
丸くなっている。
「いたぃー、いたぃー」
久々に聞いた母の声は
かすれ小さくはあるが
力のこもった声だ。
「どうした?どこが痛い?」
母のおさえる場所はここである。
我が家の猛獣達が噛んだとは
考えられない。
どこかにぶつけたのか?
転んで骨折でも?
いや、ベッドの中心で
丸くなっている事から
その可能性は無いだろう。
2時間経つが痛みは続く
母の事情を聞こうにも
普段から意志の疎通が出来ない
状態では無理な話である。
腕を少し持ち上げると小さな
母の体がびくっと震える。
眉間にしわを寄せながら
苦痛の表情を浮かべる母。
私は思った。
(あぁー、これ多分つったとか
なんかそーゆー系じゃね?
よく猫月さんもあるわ)
とりあえず母が痛みをうったえる
箇所をさすりながら大丈夫だよ。
と声をかけ続けいつの間にか
寝てしまった。
気が付くと2時間も経過している。
私のよだれでビチョビチョになった
腕をさすりながら母に問いかける。
「まだ痛む?」
2時間前と変わらぬ表情で
母は静かにうなずく。
支援センターへ連絡
今日は土曜日。
整形外科はやっていないだろう。
そもそも今の状態の母を
車に乗せる事は困難だ。
こんな時どうしたらいいのか
誰か教えてくれただろうか?
最近支援センターの方が来た際
「なんでもご相談下さい」
とおいていった名刺を思い出す。
チッ!
支援センターの代表番号しか
無いではないか。
名刺にくらい会社から与えられた
スマホの番号くらい記載しろ。
頼れる場所はここしか無い訳で
電話をかける。
「猫月と言いますが、〇〇さんに
代わって頂けますでしょうか?」
返ってきた言葉は
「あいにく〇〇は本日休暇を
頂いておりまして」
私の人生はそんなもんだ。
かならず悪い結果しか無い。
事情を説明すると母の症状を
詳しく聞かれた。
緊急性が無い事から救急車の
利用は控えた方がよさそうだ。
病院は整形外科。
しかし今日はやっていない。
緊急診療の当番の病院へ
かかるしか無い。
ここまでの流れはすべて
予想出来ている!
私が困ってるのは
腕を抱えて痛がる母を
どうやって病院まで運ぶかである。
緊急診療当番の病院
私が住むここでは
3つの病院が該当している。
・立川綜合病院
・長岡赤十字病院
・長岡中央綜合病院
これか1つが当たりだ。
最初に私と母が通院した事のある
長岡赤十字病院へ電話をかける。
当たりだ!
年配の男性受付の方に
事情を話す。
問題無く診察してもらえるようだ。
救急車が入ってきたりして
待ち時間が延びる可能性が
ある事。
新患である為に5000円程
診察代がかかる事を教えて頂き
電話を切ろうとするが
「今看護師に代わります」
いや、もう必要は無いのであるが・・・
「はい。どうされましたか?」
母の症状を話すのは何度目だろうか?
介護タクシー
以前母が動けなくなった時に
医療センターから聞いた事の
ある介護タクシーを利用する
事を勧められた。
どうやら事情を話すと
車いすで運んでくれるようだ。
いくらかかるのか不安ではあるが。
どこのタクシー会社でもいいから
事情を説明すれは利用できるそうだ。
早速タクシー会社に電話をする。
「介護タクシー?ありますよ。
利用には予約が必要です」
「今からは無理でしょうか?」
「今日言って今日は無理ですよ」
おいおい。
話が違うぞ?
事情を話すと、介護専門の
タクシー会社があるそうだ。
電話番号を教えてもらい電話を
かける。
ぷるるるるぅ。
何度か繰り返した後に
ピーガァー!
と私のスマホが悲鳴をあげる。
電話が通じないでは無いか!
悪いが我慢してくれ
どうせ治療されるのであれば
多少無理をして悪化したとしても
同じだろう。
このまま苦痛が続くより
いち早く苦痛が無くなった方が
良いのでは無いか?
私は着替えを済ませ
母を立ち上がらせる。
そう、1歩1歩。
すり足だが手を引いて
前に進む・・・
おい。待て。
母よ腕はどうした?
そして1日が終わろうとしている
あんなに苦痛の表情を
浮かべていた母は
夕食のカロリーメイトゼリーと
冷凍の枝豆。
デザートのキウイを食べ
エアコンの効いた部屋で
横になっている。
なんだったのだろうか?
まだかすかに痛みはあるようだが
特別問題はなさそうだ。
これが介護と言うものなのか・・・
次回のねこのおしごとは?
猫月さんねぇー、超びびったし!
あーもうこんなの無理だぁー。
どっか施設で面倒みてくれないと
本格的に猫月さんがダメになっちゃうぅー
って思ったね。
でもまぁー、骨折とかで無くて
良かったよ。
次回
「9ヶ月遊んだソシャゲを引退する」
「本当に猫踏んじゃった」
の2本だよ。
おたのしみにね!